とある日本の日用品が中国でめちゃくちゃバズった時期があります。大体2013年ごろの話です。いわゆる爆買いという言葉が流行った時期くらいですね。

その商品は、今も日本の店頭に並んでいます。中国でも流通しています。大手同士の取引もピーク時には及びませんが普通にあります。

ただ一般的な問屋が取り扱っているかどうか、という点では大きく異なります。

決して売れなくなったわけではありません。扱う旨味が無くなった、という言い方のほうが近いと思います。

日本の店頭で購入し、国際発送しても利益が出てしまった

当時、日本と中国でその商品の値段には、かなりの開きがありました。

どのくらいかというと、日本の小売店の店頭価格で購入し、中国へ送っても利益が出る水準です。卸価格ではありません。誰でも買える店頭の値段で買って、そのまま送っても儲かる状態でした。

この価格差の大きさが、その後に起きたことを全部決めていたように思います。

まず、日本在住の中国人が現地の親族・友人から頼まれて代理購入を行ったと言う流れが始まりと言えます。
ゆくゆくその流れが「旅行者」に変わり、日本旅行ついでに商品を店頭で購入し、持ち帰るようになりました。これがよく知られている爆買いの話です。

周知となった爆買いが始まるよりずっと前に、取り扱いができる小売店(の一部の人間)が横流しを始めました。旅行者でも代理購入するようになるくらいです。当然、流通の上流にいる者はずっと早く行動しています。
ここでいう横流しというのは、正規の取引先ではないところへ商品を流すことです。店に並べる分を、中国のバイヤーへ直接売るブローカーが間に入っています。

そしてさらに上流であるその小売店へ商品を卸している問屋までが、直接中国へ流し始めることとなります。

問屋というのは、メーカーから商品を仕入れて小売店へ売る、間に入る会社のことです。本来はメーカーが決めた経路を守る側にいます。その位置にいる会社が、経路の外へ商品を出したわけです。

こうなると、正規の流通は外から壊されたのではありません。内側から溶けました。

そしてここまで利益の出る商品には必ずと言っていいほど偽物が紛れ込んできます。そして正規品と偽物が同じ経路を流れるようになり、どちらがどちらか分からない商品が市場に混ざります。ルートを考えると偽物としか考えられない商品を掴んでしまっているが、人気商品を仕入れることができた!と喜んでいるきちんと経営している小売店のオーナーと話すのはとても辛かったです。

結論として、価格差が大きすぎたことが、商流のすべての階層を横流しに参加させた、ということになります。

商品が消えたのは、売れなくなったからではない

ここからがこの商品の本当の死因です。

真贋、つまり本物か偽物かの区別がつかなくなりました。
厳密にいうと区別する必要が出てきました。(=偽物かどうかの判断を負うというリスクが発生。)
そうなると何が起きるか。問屋が扱いたがらなくなります。

問屋は仕入れて売る商売です。仕入れたものが偽物だった場合、その責任は売った側に返ってきます。真贋を見抜き、かつ競合より安く販売しなければならない。騙されたフリをして売り抜く業者がゴマンといる中、偽物を売り抜くために単価だけは確実に下がり、それに伴い本物の単価も下がっていく。利益の削り合いとなり、1点あたりの利益がその手間に見合うかどうかのバランスが崩れるまでそう長くはありません。在庫となる前に投げ売る、この流れが浸透します。

こうして「いわくつきの商品」として見られるようになりました。売れるかどうかではなく、触ると面倒な商品という扱いです。

仕入れの要望があったとて割に合わない商品と化し、取り扱い総数は消えていきました。

需要が消えたわけではありません。殺したのはリスクのほうです。

バズという負荷

耳にタコができるほど聞く話だと思いますが、中国で商品を守るには仕組みが要ります。

具体的には3つです。

  • 価格 — どこで買ってもほぼ同じ値段になっている
  • 商標 — 類似品や紛らわしい商品に、法的な対応がすぐ取れる
  • 流通 — 商品コードやQRコードで、どこを通ってきたか追える

この3つが揃って初めて、正規品を選ぶ理由が生まれます。安いからではなく、安心だから買う、という状態です。
そして上記の例の商品においては、商標以外は崩れていました。

中国語の商標も早い段階で取ってありましたが、この例では商標を利用した類似品への誘導ではなく、純粋な偽物として出回ったので商標面での対応とは少し異なります。

価格と流通が完全に壊れてしまっていたので、本社支社とも舵取りが効かない状態まで混乱したことが状況を大きく悪化させました。
誰がどこから持ってきたのか分からない状態の商品に対し、商標の有無は意味を持ちません。

自社で管理できる範囲内の商品量が、守る仕組みの効果を最大限に発揮できる物量だと考えています。バズとは日常ではないハズレ値のため、仕組みがあっても追いつきません。

つまりバズは、起こる現象であったとしても自ら起こすモノではなく、商品(会社)にとってはただの負荷になると言うのが持論です。

儲かる隙間は、正規の流通が壊れている期間だった

ここまでを、仕入れる側から見直してみます。

日本の店頭価格で買って中国へ送れば利益が出た。あの時期、個人でも小さな会社でも、この商品で稼げました。実際に多くの人が参入しています。

なぜ参入できたのか。正規の流通が壊れていたからです。

問屋が経路の外へ商品を出しました。真贋の管理ができなくなりました。誰が売っているのか分からない状態です。だからこそ、その中に混ざって売ることができました。

結果論ですが、この壊れ方を回避するには
1:日本での単価を大きく上げるべきだった
2:中国での単価を大きく下げるべきだった

と考えています。
主に2での対応を早く行なっていれば完全に冷え切ることはなかったと考えています。
工場もフル稼働だったと聞いているので物量で押し切ることは難しかったと思いますが、中国内の正規ルートで単価を下げ、従わない問屋や小売には取引警告を行う、当時でもこれが出来るレベルの企業なので、流通面が壊れていたというのは間違いありません。

そして現在はその商品は大手同士の世界に戻っています。壊れた状態が修復され、末端が入り込む場所が無くなりました。商標の管理も当時より厳しくなっているので、扱いたくても難しいという話も聞きます。

つまり、末端が入り込めていた期間というのは、正規の流通が壊れていた期間そのものだったということになります。

「今なら儲かる」と見えている隙間は、多くの場合、誰かの仕組みが壊れている状態を指しています。壊れているものは、いずれ直されるか、商品ごと消えます。どちらにしても短いです。

仕入れる前に見る2つ

では、バズっている商品を見つけたときに何を見るか。2つあります。

1つめは、価格差の大きさです。

見るのは差がいくらあるかではありません。その差に気づくのが自分だけか、それとも商流の全階層が気づく大きさか、です。

卸価格でようやく利益が出る程度の差なら、気づくのは仕入れの経路を持っている人だけです。ところが店頭価格で買って送っても利益が出るとなると、話が変わります。旅行者も、小売店も、問屋も、全員が気づきます。全員が気づく差は、全員が参加します。

2つめは、扱っている人の多さです。

その商品を扱っている個人や小さな業者が、市場にちらほら見えるとします。いろんな人が取り扱っていれば、大体は守られていません。

守られている商品には、そもそも横から入る場所がありません。公式が中国のオンライン店舗を直接運営しています。商標も押さえてあります。価格も揃っています。そういう商品に、個人が入り込む余地はありません。逆に言えば、誰でも扱えている状態が、守りが無いことの証拠になります。

なお商標については、扱おうとしている商品が誰かに先に押さえられていないかを、自分で調べる方法があります(中国で商標を先に取られる仕組み|越境ECセラーが出品前に確認すべきこと)

結論として、見るのは商品の人気ではなく、その人気に誰が気づいていて、誰が守っているか、ということになります。

現地の値段は、日本から見ると違って見える

1つめの点検には、現地でいくらで売られているかを知る必要があります。

ここで引っかかるのが、日本から検索しても現地の売り場が同じようには見えないという点です。

検索結果に出てくる商品も、表示される価格も、どこから接続しているかで変わります。判断の材料になるのは、日本から見えている画面ではなく、現地の人が実際に見ている画面のほうです。

現地の画面を見るには、その国のIPアドレスから接続する必要があります。IPアドレスというのは、インターネット上でどこから接続しているかを示す番号のことです。これを切り替えるのがVPNと呼ばれるサービスです。選ぶときの基準は販売したい国のサーバーを持っているかの一点に尽きます。

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台湾のShopeeを日本から見たときに何が起きるかは、別の記事に実際の画面付きで書いてあります。(日本のIPではShopee台湾で検索すらできない——NordVPNを越境ECの実務で使った記録)

まとめ:分かれ目は商品ではなく、立っている位置

バズっている商品を見つけたとき、選べる道は2つあります。

1つは、そこに横から並んで売ることです。壊れている期間だけ稼げます。ただし、その期間がいつ終わるかは自分で決められません。商品ごと末端から消えることもあります。今回の例に挙げた商品がそうでした。

もう1つは、守る側に立つことです。日本のメーカーに直接話を通して、正規に扱わせてもらう道です。時間はかかりますが壊れることを前提としたような商売ではありません。(こちらの記事をご参照ください。個人でもできる越境ECの正規仕入れルートとは|転売屋から正規販売店になる方法)

同じ商品を見ていても、どちらに立つかで結果が変わります。分かれ目は商品の側ではなく、自分が立っている位置のほうにあります。

そしてこれは実感として言えることなのですが、企業や商品のネームバリューは、あまり関係がありません。一次卸の位置でないと、少なくとも中国での展開は難しいです。一次卸というのは、メーカーから直接仕入れる位置のことです。有名な商品を扱えることと、その商品で商売が続くことは、全く別の話です。


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