「TikTok(Douyin)が流行っているから、ショート動画を投稿すれば売れる」
  ——この考えで中国市場に参入しようとしているなら、まず中国SNSの構造を理解する必要があります。

前回の記事「中国ECで出品しても売れない仕組み」で整理した通り、中国ECでは出品しただけでは売上がゼロになるエコシステムが存在します。SNSの動線設計はその中核を担います。

中国SNSはそれぞれ異なる「役割」を持っている

JETROの資料によると、中国のSNSはそれぞれ独自の役割とユーザー層を持っており、これらを組み合わせた動線設計なしに商品は動きません。基本的な動線はこうです。

  • 小紅書(RED):口コミの起点となるプラットフォームです。購買意欲の高い若い女性ユーザーが8割以上を占め、KOC(一般消費者に近い口コミ発信者)による評価がここで作られます。REDでの評価がなければ、他のプラットフォームでの信頼構築も始まりません。
  • 抖音(Douyin)/ 快手(Kuaishou):ショート動画で認知を広げるプラットフォームです。ただし外部ECへの直接リンクに制限がかかるケースがあり、認知を作っても購買につなげる設計が別途必要になります。
  • 微信(WeChat):12億人以上が使う生活インフラです。顧客との継続的な対話やリピーター囲い込みはここで行われます。公式アカウントの運用なしにブランドを定着させることは困難です。
REDとDouyinとWeChatを組み合わせた複雑なマーケティング動線

これを副業の時間で運用することは物理的に不可能

上記のすべてのアカウントを開設し、それぞれのプラットフォームの文化に合わせたコンテンツを定期投稿し、中国語でコメント対応をする。さらにこの広告運用と並行して進める必要があります。

個人が副業として確保できる時間とリソースの範囲で、この複合的な運用を継続することは現実的ではありません。
中国SNSマーケティングは、専任の担当者と一定の予算を持つ組織を前提とした設計になっています。

「一点突破」が許される市場を選ぶ

一点突破で勝負するシンプルな戦略とShopeeのイメージ

ShopeeやeBayでは、基本的にプラットフォーム内の検索で勝負が決まります。REDで口コミを仕込み、Douyinで認知を爆発させ、WeChatで囲い込むという複雑なパズルを組まなくても、適切な商品を適正価格で出品することで購買につながります。

個人のリソースは有限です。SNSの更新作業に時間を使うのか、リサーチと販売に集中するのか。どちらが利益に近いかを判断した上で市場を選ぶことが、個人セラーにとって最初の重要な意思決定です。ShopeeやeBayでの具体的な戦略についてはこちらの記事で整理しています。