越境ECの現状から見る「メイド・イン・ジャパン」神話の真偽と市場原理
「日本製なら売れる」という思考停止が招く市場での敗北
【本記事の要旨】
・「日本産」という記号のみに依存した輸出戦略の限界
・中国をはじめとする巨大市場における消費行動の構造的変化
・日用品メーカー「キクロン」に見る、機能的価値と歴史的文脈の優位性
越境ECや海外進出において多くの事業者が陥りがちな構造的な罠があります。
それは「メイド・イン・ジャパンであれば売れる」という過去の成功体験への過剰な依存です。
しかしおそらく市場の原理は既に転換点を迎えており、本質的な商品価値の再定義が求められています。

市場原理:「産地」から「機能と文脈」へのパラダイムシフト
では瞬間的にトレンドを形成するヒット商品と、そうでない商品の決定的な違いはどこにあるのでしょうか。
根底にある共通法則は、極めて物理的かつ合理的な
「性能面での優秀さ」に対する評価です。
現在の中国市場などにおいては、消費者のライフスタイルに適合する製品スペックの提供はもはや前提条件に過ぎません。
それよりも、その背後にある「一貫したプロダクトのストーリー」こそが購買決定における重要な指標となっています。
一例として、
日用品メーカーであるキクロン株式会社の事例からこの構造を見てとることができます。
同社製品が海外市場でシェアを拡大している最大の要因は、
日常生活における「利便性」と「品質の安定性」にあります。
食器洗い用スポンジなどのコモディティ商品は世界中どこにでも存在しますが、
「高品質で使い勝手が良い」という物理的な機能性こそが評価のコアとなっています。
市場が本当に求めているのは、家事や生活の効率化を直接的に手助けしてくれる
「実用的なソリューション」なのです。

構造的課題:「名ばかり日本製」が淘汰される理由
特筆すべきは、同社のボディタオルに見られる市場開拓のプロセスです。
入浴時にボディタオルを使用する習慣が存在しなかった地域に対し、
新たな消費行動(ライフスタイル)を提案し定着させつつあります。
これが意味するのは、商品が受け入れられる背景には、
長年にわたる製造品質の管理と、それに基づいた「信頼」というデータの蓄積があるということです。
「Made in Japan」という印字そのものに、かつてほどの魔法の力は残っていません。
その事実の裏付けとして、徹底した品質管理のもとで製造された
「Made in China」表記の同社製品と、「日本製」表記の製品との間に顕著な人気の差は確認されていません。
すなわち、消費者にとっての「産地」はすでに個人の嗜好の範疇へと格下げされており、
購買を決定づける絶対的な優位性ではなくなっているということです。
解決策:70〜80点の「最適解」を供給する
現地の一次情報や市場データを見ると、かつての中国市場に存在した
「安かろう悪かろう」or「高額な高級品」という両極端な消費構造は既に崩壊しています。
現在、最も厚い支持層を形成しているのは
評価基準で言えば「70〜80点」の品質を安定して担保するコスパ商品、
つまりコストパフォーマンスに優れた商品です。
「最低限の実用的な品質が担保されていること」が購入時のスクリーニングを通過するための絶対条件、つまり「共通認識」として定着していることを販売側は理解しておく必要があります。

機能的メリット:歴史と品質がもたらすLTV(顧客生涯価値)の最大化
加えて、市場は「企業の歴史」に対して高い信頼スコアを付与する傾向にあります。
長年にわたり品質を維持してきたという事実は、そのまま消費者への
「安心感」という名の無形資産に変換されます。
性能と機能面を愚直に磨き上げ、そこに企業が培ってきた歴史的文脈が乗ることで
商品は国境を越えた新市場においても強固な地盤を築きます。
越境ECにおいて事業者が注力すべきは、表面的なパッケージングや産地偽装まがいの権威付けではありません。
自社製品の「機能的メリット」と「品質の持続性」を、いかに論理的かつ誠実に市場へ提示できるか。
そのポイントに尽きます。