中国EC市場の異常な生存競争:「星評価」の無意味さと「返品」の前提

中国のオンライン市場において、消費者は「色違いの商品を両方買い、気に入らなかった方を無条件で返品する」という行動を当たり前に行います。そして驚くべきことに、販売側もこのえげつない返品・返金保証を完全に容認しているのです。

なぜ、このような商売が成立するのでしょうか。理由は極めて簡単です。

販売者が「配達保険」に加入しているからです。
お客はチャットで返品を伝えるだけで自動的に運送業者が回収に動き、販売者側も保険によってダメージを相殺できます。これにより消費者の購買ハードルは極限まで下がり、オンライン購入のリスクがほぼ解消された結果、オフラインの店舗はバタバタと潰れ続けています。

評価システムの崩壊と「販売数」という絶対神

では、保険に守られている販売者が最も恐れているものは何でしょうか。

そう、それは「悪い口コミ」です。
たった一つの悪い評価がつくことで、そのジャンルで生きていけない致命傷になるという異常なレベルの危機感を彼らは持っています。

5段階評価で星5が当たり前、それ以外は終わり。
つまり商品の画像掲載されているのと同じ、星5評価前提で商品が並んでいます。つまり消費者は商品レビューを見ていません。

いいですか?もう一度言いますね。

中国市場では「星の数」は無意味です。評価で差は発生しません。つまり品質の良さを星の数でアピールしようとする日本の常識は、現地では全く通用しません。

彼らにとっての唯一の判断基準は「購入者数の多寡」です。「売れている商品=良い商品」という極めて物理的な数字だけが、市場における絶対的な信頼の証となります。

インスタント麺を殺したのは「同業他社」ではない

この市場の構造を理解せずに戦うとどうなるか。
ここで一つの例を挙げたいと思います。あるインスタント麺のメーカーが倒産したという事例です。

一見「同業他社の美味しいインスタント麺に負けたのだろう」と考えてしまいますが、答えは「ノー」です。

彼らが倒産した理由は「配達インフラが主流になり、若干の手数料を払えば出来立ての料理が食べられるようになったから」です。販売数にダイレクトに影響したんですね。
わざわざそれほど美味しくないインスタント食品を食べるよりも出来たてを食べられるならその方がいい。その需要を配達インフラが満たしました。

需要の変化により課題解決の切り口が変わる。

中国でお香が売れ続けている理由も同じです。
彼らはただのお香を売っているのではなく、若者には「ストレス解消のリラックス」、高齢者や施設には「換気と消臭」という、全く異なる2つのアプローチから課題解決を売っているのです。

生存の論理:常識を俯瞰し、現地の「構造」に適応する

【合理的な判断基準は】
リソースを持たない個人や事業者が生き残るには「日本の常識(高品質なら売れる、返品は赤字になる)」を一旦外して見ることかもしれません。現地の「配達保険」を使えないのであれば、それに対抗できるだけのベネフィットの提示が求められます。もし適応するのであれば「販売数」という指標のみを追う構造に適応する側に回る必要があります。

自社商品が「誰の何の代替品になるのか」を冷静に定義し、販売数を積むエコシステムを構築すること。市場の構造に抗うのではなく、そのインフラに乗りこなすことが「利益を抜ける」強い商品展開へと繋がります。

現地の消費者が「いま何を買っているのか(販売数の多寡)」そして「競合がどんなレビュー対策をしているのか」をどうやって把握しているか。
日本からのアクセスでも可能ですが、私はVPNを導入することを薦めています。