中国ビジネスの罠。「商標登録」はゴールではない

中国市場への進出。越境ECであれ一般貿易であれ、多くの方が最初に気にするのが「商標」です。

確かに、商標さえ取れば安心、という気持ちもわかります。権利で守られれば、安全にビジネスを展開できるはずだ、と。

しかし、きっぱりとノーを提示します。現実はそんなに甘くありません。

貿易の世界に身を置いて20年、様々なトラブルがありました。
商標登録は単なるスタートラインに過ぎません。ここでは、現場で実際に起きている「泥臭いトラブル」の実態をお伝えします。

商標登録「なし」で待ち受ける3つの地獄

まずは、商標を持たずに丸腰で市場に突入した場合の典型的な失敗構造です。大きく分けて3つのパターンが存在します。

1. メーカー競合型:味方からの背信

意外かもしれませんが、一番厄介なのはメーカー自身とのバッティングです。販売会社として市場を開拓したにも関わらず、メーカー自身が直接販売に乗り出してきて権利関係のトラブルに発展するケースです。

取り扱っている商品は間違いなく「オリジナル(本物)」である分、防ぎようがないのが実情です。

2. 類似品発生型:勝手に増殖するバリエーション

市場で商品が少しでも跳ねると、一瞬で類似品が出回ります。
オリジナルよりも価格を下げたり、内容量を増やしたり、おまけのケースを付けたりと、勝手に商品の展開バリエーションが増やされていきます。

「利益を抜ける」と判断すれば、手段を選びません。

3. すり替え型:時間をかけた乗っ取り

これは本当に恐ろしい手法です。最初はオリジナル商品を仕入れて本物を販売し、市場に定着させて印象付けを行います。そして途中から、徐々に自社ブランドの商品へと「すり替え」を行っていくのです。

越境ECではプラットフォームの監視もあり発生しにくいですが、一般貿易のルートに乗ると普通に発生しうる問題です。商標登録がない場合、この乗っ取りを防ぐ手立てがなく、さらに危うい状況に陥ります。

商標登録「あり」でも安心できない?2つの罠

「なるほど、じゃあ商標を取りさえすれば大丈夫だな」

そう思った方、少し待ってください。中国で商標登録を完了させていても、完全に安心することはできないのです。ここからが「越境の論理」です。

1. 人気商品「上昇型」:ブームが呼ぶ偽物の群れ

商品が人気になり、販売価格が上昇していくパターンです。一見すると喜ばしいことですが、正規代理店だけでなく、個人輸出(中国側から見れば輸入)でも利益が出やすくなるため、商品の横流しが爆発的に増加します。

利益が抜ける分、同時に偽物が発生する可能性も高く、人気がある間は売り上げと共にリスクも上がり続けます。その対策として動く際に、商標があると非常にスムーズな対応が可能です。しかし積極的に動かなければバズが終わった後、文字通りすべてが終了します。

対応するための商標であり、持っているからと言って自動的に人気が担保されるものではありません。商品は守れますが、市場で生き残れることとは別の話です。

2. 人気商品「下降型」:利益なき信頼の末路

逆に、人気商品であるがゆえに価格競争が起き、価格が下がっていくパターンです。商品のネームバリューや信頼は確立されているため、需要自体は長く続きます。

しかし、ここにも落とし穴があります。販売しても利益が出ない水準まで価格が落ち込むと、何とか「利益を抜ける人」になろうと、悪質な業者がコスト削減のために偽物を混入させるリスクが発生するのです。

この場合、商品を守るための商標は必須です。

【戦略的結論】現地の目が必要となる

商標は「魔法の盾」ではありません。重要なのは、権利を取った上で、市場をどう監視し、どうコントロールするかです。

私自身は現地中国にいるビジネスパートナーが非常に大切な存在となっていますが、リアルタイムで現地の一次情報を取りに行ける体制がなければ、これらのような市場状況を完全に把握し、対応することは不可能に近いです。

代替手段はありません。机上の空論ではなく、泥臭くとも実務に精通した現地の人間と組むこと。唯一確実な防衛手段と言えるかもしれません。