前回の記事「越境ECで販路を失う前に知っておきたい物流リスク」では、爆発的な注文増による「物流リスク」について論理的に解説しました。
多くのセラーが直面する「類似品(≒コピー)による市場崩壊」について、今回は少しばかり経済学的な視点からメスを入れます。

せどりや輸出ビジネスにおいて、誰も気づいていない「ニッチな売れ筋」を見つけた時
大抵は「よし!」と思うでしょう。むしろそれを見つけるのが仕事でもあると言って過言ではありません。

しかし断言します。
その勝ち筋は構造的に「一時的なエラー」に過ぎません。

海外市場においてその先行者利益が瞬殺されるとしたら、、、それは「負けるべくして負ける数式」の上で戦っているからであると断言できます。

今回はなぜ転売屋が現地セラーに勝つことが数学的に不可能なのかを証明します。


あなたのショップは「無料のテストマーケティング」機能

実験室で観察されるマウスのようにデータを収集される日本人セラーのメタファー

ShopeeやLazada、タオバオなどの市場には「情報の非対称性」はもはや存在しません。
現地のセラーは常にデータを監視しています。

そして彼らにとって個人セラーはカモというものではありません。
「リスクを負担して市場の需要をテストしてくれる便利な外部委託先」のようなものです。

1. 個人セラーがコストをかけてリサーチし出品する。
2. 売れるかどうかの「実験結果」が出る。
3. 売れているという「確定データ」が出た瞬間、彼らは参入する。

過去同じように市場をリサーチし「自分も同じ事をやっていた」と思えるのであればあなたはいい人です。
自分でビジネスをしているつもりで、実は現地セラーのために無料で市場調査を代行しているに過ぎません。

現地セラーが常にデータを監視しているのであれば、こちらも同じ土俵で市場を監視できているかが分かれ目になります。
少なからず越境ECの実務に関わってきた身としては、日本国内の回線から現地のモールへアクセスした際に、表示される価格や在庫状況が実際の現地環境と微妙にズレているケースを何度か経験しています。海外の販売データや類似品の有無を正確に把握するためには、現地に近い環境からアクセスできる通信手段を整えておくことが、地味ですが有効な防御策になります。この点については越境ECリサーチとVPNの関係|日本からでは市場の実態が半分も見えていない理由で詳しく整理しています。

「コストリーダーシップ」の欠如による必然的敗北

工場での大量生産によりコピー商品が市場に溢れるイメージ

そして次にコスト構造の話をしましょう。
ただの転売屋が現地セラーに勝てない理由は精神論ではなく、単純な算数の問題です。

【あなたの原価構造】
日本の小売価格 + 国際送料 + 関税 + プラットフォーム手数料 + 利益

【現地セラー(コピー業者)の原価構造】
現地製造原価 + 安価な国内送料 + 利益

これを見れば火を見るより明らかです。
「日本の既製品」を横流ししている限り、現地で製造・調達できる彼らに価格競争で勝てる見込みは物理的に0%です。

この原価構造の差は、感覚ではなく数字で可視化しておくことをおすすめします。
関税・国際送料・プラットフォーム手数料まで含めた自分自身のコスト構造を把握しないまま「安いから対抗しよう」と価格を下げてしまうと、気づかないうちに赤字ラインを越えていることがあります。この試算方法については中国輸出でいくら残る?|総合税・手数料・広告費を引いた利益計算で整理していますので、あわせて確認しておくと安心です。

今の消費者は合理的です。
「機能が同じで、価格が安価な商品」があればそちらを選びます。一昔前のような「高額な商品=良い商品」という判断などしない市場へと市場自体が変化していっているのです。
類似品であるかどうかはさして重要なポイントではありません。

むしろ名前的に類似品の方がアドバンテージを得る場合すらあります。あなたが作ったページは類似品へ誘導するための「踏み台広告」として機能し、役目を終えます。

「参入障壁」のない利益はゼロに収束する

敗北の構図

経済学には「完全競争市場では、超過利潤はゼロになる」という原則があります。
これをこの転売ビジネスに当てはめるとこうなります。

「誰でも仕入れられる商品を売っている限り、ライバルが増え続け、利益は極限まで削られる」

もし「パクるなんてひどい!」と怒るのであれば、それは流石に商売人として未熟としか言いようがありません。参入障壁(特許、商標、独占契約など)を作らなかった明らかな設計ミスです。

「守る壁」のない場所に宝を置けば、持ち去られるのは自然の摂理です。
そこに感情が入り込む余地はありません。

ここまでの内容を踏まえて、一度立ち止まって自分のビジネスを点検してみてください。

  • 商標登録や独占契約など、他者が簡単に真似できない要素を1つでも持っているか
  • 価格以外の理由(ブランド・保証・アフターサポートなど)で選ばれる仕組みがあるか
  • 今売れている商品が模倣された場合に備えて、次の商品の仕込みを並行して進めているか

1つでも「いいえ」があれば、そこが今のビジネスにおける最も脆い場所です。

まとめ:構造的欠陥に気づけるか

今回の記事でお伝えするは一点のみです。

「商品力(=モノの良さ)だけに頼った転売は構造的に破綻している」ということ。

どれだけリサーチの腕を磨いても、どれだけ良い商品を見つけても、ビジネスモデルが「右から左への転売」である限りこの「負け確定の数式」からは逃れられません。

ではこの数式を覆すにはどうすればいいのでしょうか。
答えは一つ。

「変数」を変えることです。

次回はこの市場原理の中でも利益を出し続けている生存者たちの論理を解説します。
彼らは「攻め」ではなく「守り(構造)」を組み込むことでこの競争から離脱しました。

越境ECで長期的に稼ぎ続けるセラーの共通点|正規ルート・参入障壁・リスク分散の3つの防具


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