中国輸出の甘い罠とTikTokで売れるという幻想

「中国の人口は14億人。日本製品を並べれば売れるはず」
——この前提でビジネスを考えているなら、まず現在の中国市場のデータを確認してください。

日本企業の対中投資が3年間で約7割減少しているデータが示す通り、中国市場は「参入すれば稼げる場所」ではなくなっています。今回はその理由をさらに掘り下げます。

ネットユーザーの4割がライブコマースを使う市場の現実

JETROの最新データによると、中国ではインターネットユーザーの約4割がライブコマースを利用しています。
市場規模はわずか数年で数兆円規模に急拡大し、アリババ(Tmall)やJD.comといった既存プラットフォームに対して、Douyin(TikTok)やKuaishouが猛烈な勢いでシェアを奪っています。

これが意味することは明確です。
今の中国でモノを売るということは、スペックを並べることではありません。演者がリアルタイムで視聴者を熱狂させるエンターテインメントを提供することが、販売の前提条件になっているのです。

言語の壁があり、現地インフルエンサー(KOL)を雇う資金もない個人が、静止画と翻訳テキストだけで戦える場所は、現在の中国市場にはほぼ存在しません。

中国市場を支配するライブコマースとインフルエンサーの撮影風景

「とりあえず出品」の先に待つ商標リスク

「ライブコマースは無理でも、地道に出品すれば」と考える方もいるかもしれません。しかしそこにも構造的な問題があります。

JETROの資料では、一般貿易と越境ECの扱いの差が明記されています。一般貿易は中国商標と中文ラベルが必須ですが、実店舗への卸や自由な価格設定が可能です。一方、越境ECの直送はあくまでインバウンド消費の延長という位置づけであり、本格的な商売とは見なされません。

さらに深刻なのが商標の問題です。日本の商標だけで越境ECを始めた結果、中国国内で第三者に商標を先に取得されてビジネスが継続不能になった事例がJETROの報告書にも記録されています。このような権利問題に起因するアカウント停止の実態については、こちらの記事も参照してください。

個人が戦うべきは「ロジックが通用する市場」である

ShopeeやeBayでデータとロジックを武器に戦う個人の戦略

中国市場での戦いには、商標登録・現地法規制のクリア・ライブ配信でのエンタメ提供という3つのハードルが同時に立ちはだかります。個人のリソースでこれを並行して進めることは、費用対効果の観点から現実的ではありません。

だからこそ、ShopeeやeBayを選択肢として検討する価値があります。これらのプラットフォームでは、中国のような過剰なエンタメ化や複雑な法規制がまだ支配的ではありません。正しいリサーチと適切なツールを使った出品という、論理的なアプローチが現時点では有効に機能します。

「レッドオーシャンの中国で巨人と戦うか」「ロジックが通用する市場で着実に利益を出すか」——データで戦場を選ぶことが、個人セラーにとって最初の重要な意思決定です。ShopeeやeBayでの具体的な生存戦略については、こちらの記事「越境ECに参入した企業の5割が売上1%未満である理由」で詳しく解説しています。