SHEINシリーズの前回までの記事では、4つの問題点と安売りモデルの終焉を整理しました。今回はSHEINが直面している地政学的なリスクから、越境ECセラーが学べる教訓を考えます。

工場街での「神」扱いと、国内での「裏切り者」批判

中国・広州の工場街において、SHEINは特別な存在です。現地パートナーによると、その理由は「支払いが異常に早い」ことです。通常数ヶ月待ちが当たり前の業界で、数日で現金化してくれるSHEINは工場主にとって命綱になっています。

しかし同じ会社が、中国国内のネット世論からは「裏切り者」と呼ばれています。欧米での上場(IPO)や規制回避のために本社を南京からシンガポールへ移転したことが、「中国で育ったのに外国企業の仮面を被った」という批判を招いています。

監視カメラと暗い影、企業を取り巻く政治的圧力のイメージ

欧米と本国の両方から圧力を受ける構造

SHEINが直面している板挟みの構造はこうです。欧米側からは関税規制の強化・人権問題・知的財産侵害への訴訟という圧力が続いています。一方、中国当局(CAC)は膨大な顧客データが海外へ流出することを警戒し、事実上の規制を示唆しています。

つまりSHEINは「欧米からは叩かれ、本国からは睨まれる」という逃げ場のない状況にあります。これは一企業の問題ではなく、中国を拠点とする越境ECビジネス全体が抱える構造的なリスクを象徴しています。同様のリスクについては中国市場への投資継続を選ぶ欧米企業のデータと合わせて読むと理解が深まります。

チャイナリスクが越境ECセラーに意味すること

中国政府の政策変更やデータ規制が強化されれば、それに依存するサプライチェーンは一夜にして止まります。昨日まで売れていた商品が、政治的な判断によって明日には扱えなくなる。これがチャイナリスクの本質です。

個人セラーのレベルでも、中国からの輸入品を主力商材にしているビジネスは常にこのリスクを抱えます。特定の国の政治状況に生殺与奪の権を握られた構造は、長期的なビジネスの基盤として脆弱です。

日本製品が持つ「政治的中立性」という強み

パスポートと開かれた世界、安全な日本ブランドの輸出イメージ

対照的に、日本製品を扱う越境ECは構造的に安定しています。

日本は世界的に政治的中立性が高く評価されており、特定国との外交関係によって突然輸出が禁止されるリスクは極めて低い。日本人セラーであること自体が、海外バイヤーにとって信頼のシグナルになります。

世界情勢が不安定な時期ほど、「どこの国の商品か」「誰が売っているか」という信頼性の価値は上がります。

この優位性を活かすための正規ルート構築については、こちらの記事「個人でもできる越境ECの正規仕入れルートとは」にて具体的に整理しています。

結論:安定した基盤の上にビジネスを構築する

不安定な足場、チャイナリスクの象徴

SHEINの板挟み状態は、越境ECにおいて「誰かの政治判断に依存するビジネス」がいかに脆弱かを示しています。

日本製品という政治的リスクの低い商材を、正規のルートで世界へ届ける構造は、不安定な時代ほど相対的な優位性を発揮します。短期的な利益ではなく、長期的に持続できる基盤を選んでください。