前回の記事「越境ECを始めた人が半年以内に直面する3つの壁」では、
越境ECという市場がいかに「防具のない個人セラー」を飲み込みやすい場所であるかをお伝えしました。読んでいただいた方の中には、少し気持ちが沈んでしまった方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、誤解しないでいただきたいのは私は「海外輸出では稼げない」とお伝えしたいわけではありません。

丸腰のまま戦えば消耗するだけですが、装備さえ整えれば勝ち筋は十分に作れる、と言うことです。

少なからず中国貿易の現場に関わってきた身として今回は、激しさを増す海外市場で生き残るための「生存戦略=正規ルートの構築」について、できる限り具体的にお話ししていきます。


なぜ「横流し」スタイルは長続きしないのか

地雷原を歩くような危険な個人輸出ビジネスとリスクのイメージ

日本の量販店やECサイトで安く仕入れ、海外のプラットフォームに高値で並べる。
この「横流し」スタイルの寿命が短いのは、残念ながら現実です。この構造は必ず行き詰まります。

理由は明確で、そのビジネスに「権利(正当性)」が伴っていないからです。

以前とは異なり、現在の海外プラットフォームは模倣品・コピー品の販売に非常に厳しい姿勢を取っています。日本貿易振興機構(JETRO)がまとめた調査レポートによれば、中国では電子商務法(2019年施行)や民法典第1195条(2021年施行)、インターネット取引管理監督弁法(2021年施行)といった法整備が進み、プラットフォーム運営者自身に知的財産侵害への調査・対応義務が課されています。権利者からの申立てがあれば、該当ページの削除や店舗の閉鎖にまで発展するケースも珍しくありません。

つまり、メーカー側からの「知的財産権侵害」の通報だけでなく、消費者からの「本物かどうか疑わしい」という一件の通報だけでもアカウントが凍結される可能性があるということです。
現に今の中国では、消費者は日本とは比べ物にならないほど手厚く保護されています。

どれだけ出品数という「攻撃力」があっても、販売権という「防御力」が怪しければ、そのビジネスはいつ止まってもおかしくありません。虚偽の通報一つに対応しきれないのであれば、その商品を扱うこと自体を見直したほうが賢明です。

現地パートナーからは、こんな話を聞いたことがあります。
「巨大プラットフォーム(TmallやJDなど)で生き残っているのは、身元がはっきりしている店だけ。身元を証明できなければ、新規参入はやめた方がいい。そもそも参入できない。」


「正規ルート」という盾がもたらす3つの効果

では、どうすればアカウントを守りながら販売を続けられるのか。
答えはシンプルで、横流しではなく「正規の流通ルート(メーカー公認)」を通すことです。

具体的には、メーカーや正規代理店と直接契約を結び「販売許可(授权/オーソリゼーション)」を得ることを指します。
例えが中国市場ばかりになりますが、TmallやJD、RED(小紅書)といった審査の厳しいプラットフォームでは、出店・出品の段階でブランド側が発行する権利証明書の提出を求められることが多く、提出できないと出店すらできません。仮に何らかの方法で出来たという場合でもこれがないまま販売を続けることは、正直なところおすすめできません。

「正規ルート」を持つことで得られる効果は、主に次の3つです。

  1. アカウントリスクの縮小:販売許可があれば、プラットフォーム側の真贋調査もクリアしやすくなります。
  2. 価格競争からの距離:仕入れ値が安定し、根拠のない安売り合戦に付き合う必要がなくなります。
  3. 大きな市場への入口:信頼性が担保されれば、審査の厳しいREDやTmallのような、ユーザー数の多い市場に出店する道も開けます。

「転売屋」から「正規販売店」へ。
この移行こそが、長く続けるための必須条件だと考えています。


すべてを「自力」でやる必要はありません

ビジネスを攻撃から守る頑丈な盾と防御でもある契約のイメージ

ここまで読んで「メーカーと直接契約なんて、個人にできるはずがない」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。ですが、実際にはできます。

「実績のない個人がいきなり大手メーカーに連絡しても、門前払いになるのでは」と思われるかもしれませんが、そもそも最初から大手に声をかける必要はありません。
規模は小さくても、協力してくれるメーカーは決して少なくないのです。

まず着手すべきは、商品のリサーチです。
大手の商品ほど、実は競合が多く市場に向いていないケースが目立ちます。逆に、知名度は高くなくても消費者のニーズに応え続けている「掘り出し物」のような商品は、探せば必ず出てきます。

具体的な進め方としては、次のような手順が現実的です。

  • 狙っているジャンルで「メーカー名+卸」「メーカー名+代理店募集」などのキーワードで検索し、直接取引の窓口があるかを確認する
  • メーカーから直接仕入れができるサービスや、正規の卸ルートを提供するプラットフォームを併用し、まずは「擬似的な正規ルート」を作っておく
  • 取引が軌道に乗ってきた段階で、販売許可や取扱い証明の発行についてメーカーに相談してみる

私自身、この手のプラットフォームは商品リサーチの入り口としても活用しています。
中でもNETSEA(ネッシー)は、メーカーや卸業者と個人・小規模事業者を直接つなぐBtoB卸プラットフォームで、小口ロットから発注できるケースが多く、最初の足がかりとしては扱いやすい存在です。

最初から完璧な「正規ルート」を作ろうとしなくても大丈夫です。
まずは小さな足がかりから始め、取引実績を積みながら関係を育てていく。それが結果的に一番の近道になります。

なお、正規ルートを整えても、出品アカウントの土台そのものが不安定であれば効果は半減してしまいます。
アカウントや通信インフラのリスク管理についてはこちらの記事「越境ビジネスの通信リスクとVPN導入の必要性」でも触れていますので、あわせて確認していただければと思います。


まとめ:次世代のせどりは「誰と組むか」で決まる

個人の力を拡大し補完するビジネスツールやシステム

海外輸出は、もはや個人の力技だけでどうにかなるフェーズを過ぎています。
これからの時代は、「どの武器を選び、どのルートを通るか」───
その選択が生き残りを左右すると言っても大げさではありません。

正規ルートを整えることは、自分自身のためだけでなく、メーカーにとっても、そして最終的に商品を手にする消費者にとっても、良い結果につながるはずです。

プラットフォーム側がなぜ「身元」をここまで重視するのか、その背景を知っておくだけでも、日々の販売への向き合い方は変わってきます。こちらの記事「中国に日本製品を輸出する前に知るべき流通構造」でも整理していますので、あわせて参考にしてみてください。

次は「出口戦略」についてお話しします。

「ただの転売屋」で終わらない。未来を勝ち取るための「出口戦略」
せどり・転売に未来がない理由|価格競争から抜け出す3つの選択肢


関連記事