越境ECで販路を失う前に知っておきたい物流リスク|実録ケーススタディ
中国との貿易には、少なからず長く関わってきました。
その中で、多くの個人セラーや業者の方が「海外ドリーム」を夢見て参入し、そしてやがて姿を消していくのを見てきました。
彼らが姿を消した理由。
それは「商品が売れなかったから」ではありません。
むしろ皮肉なことに「準備が整わないまま、勢いだけでアクセルを踏んでしまったから」だったように思います。
今回は、ある日用品が中国市場で爆発的なブームになった際に実際に起きていたこと、そして「物流の乱れが招くアカウント凍結の連鎖」についてお話しします。
特定を避けるため、商品や事業者の詳細はあえて伏せている点をあらかじめご了承ください。
1. 「ようやく見つけた販路」という安堵が生む油断

せどりに携わったことがある方なら、実感を持って頷いていただけると思いますが、
このビジネスで本当に難しいのは「仕入れ」そのものではありません。
「仕入れた在庫を、利益の出る価格で売り切れる場所を見つけること」です。
国内のプラットフォームはライバルがひしめき合い、価格競争で体力を消耗しながら「どこかもっと売れる場所はないか」と探し続けている方も多いのではないでしょうか。
かつて、日本のある日用品が中国で爆発的に売れた時期がありました。
仕入れルートを持っていた業者にとっては、まさに埋蔵金を掘り当てたような感覚だったはずです。
しかし、取引量が急激に増えるということは、それだけ「管理しきれないリスク」も同時に増えるということです。
この点を、当時の関係者の多くが甘く見積もっていたように思います。「売れる場所」を見つけた安堵感こそが、最大の隙を生んでしまったのです。
2. 海外に流れた瞬間、「正規品」という前提が崩れる

以前の記事「越境ECを始めた人が半年以内に直面する3つの壁」でもお伝えしましたが、日本国内の流通は、良くも悪くも「温室」です。
量販店やネット卸で仕入れた商品に偽物が混入していることは、まずありません。
ところが、一歩でも海外への流通に乗せると、状況は一変します。
当時は多くの卸問屋やブローカーが介在し、日本の商品は複雑なルートを経由して取引されていました。
正規の卸から出荷された商品であっても、港に到着する頃には、メーカー自身にも把握しきれない形に流通ルートが歪んでいくケースがあったのです。そして最終的に最も大きな損害を受けたのは、皮肉にもそのメーカー自身でした。
自社の商品がどこをどう経由して消費者の手元に届いたのか、追いきれなくなっていたためです。
現地の実務に精通しているはずの中国の卸問屋ですら、この歪みを見抜けなかった、あるいは見て見ぬふりをしていたケースもあります。そのような構造の中で、個人セラーである私たちが「自分だけは大丈夫」と言い切ることは、正直なところ難しいのではないでしょうか。
3. 「証明できなければBAN」という、待ったなしの現実

「自分はAmazonやeBayを使っているから関係ない」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
プラットフォームは異なりますが、一つの例としてお話ししますと
現在、タオパオやTmallといった中国の大手プラットフォームは、真贋に関する監視を強めています。
最終消費者から「これは本物でしょうか」という通報が入ることがあります。
あるいは、競合セラーが消費者を装って通報するケースも実際にあります。すると、販売しているショップに対して「警告」が届きます。
「真贋を証明する書類を提出してください」というものです。
もしこれが自分のショップに届いたらと想像してみてください。
手元にある商品が「どのルートを経て来たものか」を、メーカーの請求書などの公的な書類で証明できるでしょうか。
量販店のレシートやネットショップの購入履歴は、多くの場合、証明として認められません。あくまでメーカーとの直接取引を示す書類が求められるためです。証明ができなければ、待っているのは「アカウント停止(BAN)」です。
苦労して開拓した販路を、一瞬で失うことになります。
これはあくまで一つの可能性ではありますが、出品の取り下げが間に合わなければBANはほぼ確定し、以降その商品を同じアカウントで扱うことは実質的にできなくなります。
4. 今日からできる「販路を守る」ための備え
ここまで読んで、漠然とした不安を感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、対策自体はそれほど難しいものではありません。日頃から次の3点を意識しておくだけで、リスクの大部分は防げます。
- 仕入れの都度、証憑を保管する:メーカーまたは正規代理店が発行した請求書・納品書は、原本またはPDFで必ず保管しておきます。量販店のレシートだけに頼らないことが重要です。
- 販路を一つに集中させない:特定のプラットフォーム・特定の商品に依存した状態は、そのアカウントが止まった瞬間に事業全体が止まるという意味でもあります。複数の販路に分散しておく考え方については個人がShopeeやeBayで生き残る条件で詳しく整理しています。
- 受注が急増した時こそ、証明体制を再点検する:売上が伸びている時ほど気持ちが緩みがちですが、まさにそのタイミングこそ、真贋証明の準備状況を見直す好機です。
また、こうしたリスクは物流コストという数字にも表れます。
→証明できない在庫を抱えたまま出品停止に至った場合の損失規模については、関税・送料・手数料まで含めたコスト構造の試算記事もあわせてご覧いただくと、備えの重要性がより具体的に見えてくるかと思います。
まとめ:販路を守るための「武装」
今回の事例からお伝えしたかったことは一つです。
海外の新しい販路は、在庫を捌く大きなチャンスであると同時に、アカウントを一瞬で失いかねない地雷原でもあるということです。
在庫を捌ける場所を見つけること自体、本当に骨の折れる作業です。
だからこそ、せっかく見つけたその場所を、不注意によって手放してしまうことほどもったいないことはありません。
証明できるルートを持たないまま商品を横流しするだけのセラーは、今後さらに精度を増していく監視の仕組みの中でいずれ淘汰されていくはずです。長く販売を続けたいと考えるなら、売ることと同じくらい、あるいはそれ以上に「守ること」に意識を向けていただければと思います。
次回は同じく気の抜けない話として、「コピー地獄」についてお伝えします。
→せっかく見つけた売れ筋商品が、翌週には別のセラーに相乗りされ、単なる「踏み台」にされてしまう。そんな出来事についてです。
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