「海外なら高く売れる」は成立しない|台湾の実売価格と日本の小売価格を並べて分かったこと
「海外なら高く売れる」——
越境ECを始めるとき、多くの人がこの前提から入ります。この前提のまま商材を決めて、あとで計算したらギリギリ・・・。
台湾の実売価格と日本の小売価格を並べてみると、その前提のほうがあっさり崩れます。
今回は扱っている商材の数字をそのまま出して確認してみたいと思います。
まず結論から
少なくともアジア圏では店頭の小売価格に大した差はありません。
フィールドが変われば何かが劇的に変わる、ということは起きないと思っています。
海外は日本市場の延長でしかありません。
そして、付加価値がついていない商品にとって海外展開は難しい。
「日本製なら海外で高く売れる」という前提はどこから来るのか
日本国内だけで商売をしている個人/小売/法人の方々と話していると、ぼちぼちこの前提を持っている方が見受けられます。
- 日本製は品質が高いから、海外なら高値がつく
- 使ってみれば違いがわかってもらえる
- 国内は値下げ競争で消耗しているが、海外に出れば違う
気持ちはすごく分かります。国内市場で消耗していればしているほど、外に出口があるように見えてしまいます。
加えて日本製がウケた時代を重ねてしまうとどうしても日本製神話に引っ張られてしまいます。
海外の消費者が日本製というだけで日本の1.5倍や2倍を払ってくれる、という状態は今はもうほぼ成立していません。少なくともアジア圏では手放しで成り立つことはもうないように感じます。
関連記事: 越境ECを始めた人が半年以内に直面する3つの壁
実際に調べました
Shopee台湾でのボディタオルの相場を見てみました。
私が取り扱っている主力商品でもあるのですが、キクロンの「アワスター」というボディタオルです。日本のドラッグストアでもよく見かける一般的な日用品です。
まず、台湾で同じような商品——日本製のナイロン系の沐浴巾・洗澡巾——がいくらで売られているかを調べました。(1TWD ≒ 4.61円・2026年8月5日・台湾銀行)
| 商品 | 台湾での価格 | 円換算 |
|---|---|---|
| Lumina 露蜜 日本製 濃密泡沫沐浴巾 | NT$109〜120 | 約503〜553円 |
| TATSUNE 日本傳統搓澡巾(3色) | NT$149〜175 | 約687〜807円 |
| YOKOZUNA 橫鋼 日本製 男用極泡沐浴巾(買一送一) | 1枚あたり約NT$280 | 約1,291円 |
台湾の相場帯は、おおむね NT$109〜175。日本円だと約503〜807円です。
※出典はPChome・momoなどの台湾の大手ECです。
余談ですが、現地の価格を見るには現地のIPが要ります
これは調べていて改めて実感したことなのですが、Shopee台湾は日本のIPアドレスからだと、検索や商品ページのタップの時点で会員登録の壁が出てきて先に進めません。
トップページは見えるのに「売り場には入れない」という状態です。
台湾のサーバーを経由するとそのまま閲覧できます。「表示の差」ではなく「入場できるかどうかの差」でした。
相場を調べる、競合の値付けを見る、という作業をやるならここは避けて通れないところだと思います。NordVPNを使用してみたのですが、使い勝手や速度で困るような場面は今のところ出ていません。
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相場を知らないまま仕入れて在庫を抱えるほうが高くつくので、調査環境としては安い部類だと思っています。NordVPNの料金と対応国を見る![]()
使い方と日本IPで何が起きるかは別記事に書いていますのでご参考までに。。。
日本のIPではShopee台湾で検索すらできない——NordVPNを越境ECの実務で使った記録
日本の店頭価格を換算してみます
次に、同じ「キクロンアワスター」が日本でいくらで売られているかです。
| 販売元 | 価格 |
|---|---|
| ウエルシア | 698円(税込767円) |
| たおるや(業務用) | 510円 |
メーカーはオープン価格なので幅がありますが、日本の小売はおおむね 510〜768円でした。
両方の通貨に直して並べてみます。
| 円 | 台湾ドル | |
|---|---|---|
| 日本の小売価格 | 510〜768円 | NT$111〜167 |
| 台湾の実売価格 | 約503〜807円 | NT$109〜175 |
円だけで見ると、510〜768円 と 約503〜807円。ほぼ横並びですね。
日本製のボディタオルは、台湾でも日本とだいたい同じ値段で売られています。
実はこれはShopee台湾に限った話ではなく、中国本土のTmallやREDといったプラットフォームでも同様です。特別なことではありません。
なぜ同じ価格帯となるのか
これは不思議なことでも何でもなくて、
- 正規のルートで入っているから
- もしくは正規のルートで入っていないから
です。どちらも成り立つのです。
アジア圏の流通は成熟しています。
日本の日用品で、そこそこ売れるものはたいてい商社なり代理店なりが既に持っていっています。そして向こうの小売がそれを並べている。
しかし、この場合は往々にして相場は少し高くなるはずです。
相場が安くなる原因は、非公式、つまり転売形式で個人(企業の場合もある)が入れているパターンがほとんどです。経費そっちのけで少しだけでも仕入れ値よりも高く売れれば良いという感覚です。
しかしおいしい価格差が放置されるほど市場は甘くも易くもありません。最終的には値下げ合戦となり、1元でも原価より高ければ良いという層が必ず現れます。この層がいる限り不当な安売りからは逃れられません。
結論として、販売価格は日本の小売価格をベースとした価格帯に落ち着くというわけです。
「日本と海外で価格差があるはずだ」という発想自体は、間違いありません。
まだ誰も気づいていない需要を見つけるという前提であれば良いわけですから。つまりそれ自体がリサーチを頑張った結果得られた付加価値とも言えます。
小売仕入れの時点で危うい
話を戻すとここまでの数字で、計算するまでもない結論が出ます。
日本のドラッグストアで698円で買った時点で、それはもう台湾の店頭価格です。
NT$151ですから相場帯のど真ん中。
そこに乗っかってくるのが、
- 国際送料
- Shopeeの各種手数料
- 決済まわりの手数料
- 為替の変動分
引き算するまでもなく赤字です。
どんなに安いストアでも小売である時点で「安く仕入れて海外で売る」という形は組むことができません。最低限卸問屋から仕入れることが絶対条件となります。
価格が崩れていく構造そのものは別記事に記載しています: 中国市場で「バズった商品」が二度と売れない構造的理由
じゃあどうするのか①:仕入れの階層を上げる
価格で戦う前提に立つなら、打ち手はひとつしかありません。
仕入れ値の層を変えることです。
小売で買っている限り、スタートラインが現地の店頭価格と同じになってしまう。
だから卸に行く、卸でも足りなければメーカーに行く。
このブログの他記事にて「メーカー取引を狙わないといけない」という話をしていますが、その理由はここにあります。精神論でも何でもなく、ただそこに行かないとそもそも勝負にすらならないというだけの話です。
じゃあどうするのか②:利幅が大きい商品を混ぜる
赤字になってもいいから売れ筋の人気商品をとにかくたくさん販売する、その分確実に利益を取れ利幅の大きい商品でその赤字分を埋める方法です。
この方法の良い所は、売った分は店舗の評価として返ってくるので実質広告費として割り切って良いという点です。ただし圧倒的資金力と利幅がある商品を仕入れるリサーチ力が必要です。ガッツリ仕入れるので小売ではなくこれもメーカーの方が良いという点では本質的に①と変わりません。
じゃあどうするのか③:付加価値がつけられる商品を選ぶ
もうひとつの道が、そもそも価格で戦わない、という方向です。
ただ、ここで先に分けておきたいことがあります。
売り手側の条件と、買い手側の理由は別物です
先の例で挙げたキクロンのボディタオルは、荷姿が 100×150mm・40g 程度です。軽くて小さくて、容積重量の問題もない。
越境ECの商材としてはまあまあ条件がいいほうです。
つまりこの商材は、
- 荷姿が軽い(送料負担が少ない)
- メーカーから第一次卸で引ける(原価が安い)
この2つを満たしています。
が、売れるかどうかは全くの別の話です。当然です。
買う人がその商品を選ぶ理由ではまったくないのですから。
どちらも「売り手側のコスト条件」です。
越境ECの情報を見ていると、「軽くて小さいものを選べ」「安く仕入れられるルートを作れ」という話がとても多いです。どちらも正しいのですが、それは買う理由の話をしていません。コストが有利なだけでお客さんから見た違いはゼロなんですね。
軽さも、仕入れ値も、付加価値ではない。
ここを混同すると「条件はいいはずなのに売れない」という沼にはまります。それは勿体無い。
では、付加価値とは何か
耳にタコができるほど聞いたことがあると思いますが、重要なのは付加価値です。売れている商品にはどれも付加価値がついています。
買い手から見て「これがあれば悩みが解決する!」と思える理由のことです。
もしかしたら消費者自身も悩みを自覚していないかもしれない。そんな悩みを解決できる商品こそ求められる商品なのだと思います。
しかし今は物品という側面に絞って付加価値だと思われている条件をピックアップしたいと思います。ざっくりとですが、4つの型に分けてみます。
① 現地に流通していないもの
台湾の正規ルートに乗っていない日本ブランド、あるいは同じブランドでも現地展開していない型番。比較対象そのものが存在しないので、現地相場に引きずられません。
② メーカーと組んで作る優位
独占販売、こちら向けの型番違い、OEM、セット組み。他のセラーが同じものを出せない状態を作る、という方向です。①の希少性が「見つける」ものだとすると、こちらは「作る」ものになります。
③ 用途が限定された専門品
業務用、介護、医療の周辺など。用途が絞られていて、安い代替品がそもそも成立しない領域です。日用品のように「似たようなのでいい」が通用しません。
④ 単価に説明がつくもの
品質、保証、アフターサポート。なぜこの値段なのかを言語化できる商品です。逆に言うと、説明ができない商品は、必ず安い方に流れます。
まとめ
商材として選ぶときの基準。
「日本で安く買えるか」ではなく、「現地で付加価値を主張できるか」
- 台湾の相場と日本の店頭価格は、ほぼ同じところに並んでいる
- だから小売仕入れでは、送料を乗せる前に終わっている
- 荷姿の軽さも、仕入れ値の安さも、売り手側の条件であって付加価値ではない
- 付加価値が主張できないなら、残る道は仕入れの階層を上げるか、利幅の大きい商品を混ぜるかのどちらか
海外に出れば何かが変わる、ということは起きません。海外は日本市場の延長です。
そのうえで、まだやりようはあると思っています。
メーカーに辿り着く方法そのものは、別の記事で書きます。今後の販売状況などはnoteの方で記載していければと思います。
これから台湾Shopeeに出店する方へ、申請まわりの実務はこちらにまとめています: Shopee出店申請のやり方(4つの事業形態別・画像付き)


